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2020年7月 2日 (木)

「能楽師のモーニングルーティーン 日常編」

 Uチューブの動画

です。このところお気に入りの金剛流若手能楽師、山田伊純(いすみ)さんの「いすみちゃんねる」。「能楽師のモーニングルーティーン」って、何を写しているんだろうと興味を持って見始めたら、朝、狭いシングルサイズの布団にくるまって寝ている姿から始まって、携帯のアラームで「まだ眠いよー」という風情でようやく起き、歯を磨き…。まだ若いのに奥さんと一緒に寝てないの? とか、ツッコミどころ満載です。

 パジャマでなく浴衣を着ているところが能楽師らしい。と妙に感心したり。起きてから、歯を磨いたり、その後、稽古をするときも浴衣なんですね。

 (家元での内弟子)修行時代から靴を毎日ピカピカに磨き上げるのが大好きだとか。能楽師にとって足は何より大事なのだとか。ということで靴を磨くのですが、手際が良くて、本当に上手に磨いています。

 洋服に着替え、行ってきま〜す、というところで動画は終了。奥さんが撮ったにしてはずいぶん巧みな撮影技術です。伊純さんってなかなかのイケメンなのですが、眉がきりっとし過ぎているのか、見ようによってはコワイ人にも見えるのです。その人物が真面目な顔をして歯を磨いたり、髪をオールバックに整えたりしているシーンがなんとも言えず可笑しくて、つい笑ってしまいます。

 どんな目的でこの動画を作り、公開したのかよくわかりませんが、私自身は能楽師さんに親近感を感じたのと同時に、やっぱり一般人とは違うんだなあと感心してしまいました。

 

2020年6月30日 (火)

OKINA Dance of Life

 こちらの動画

 NHK WORLD-JAPANの番組です。坂本龍一にスポットを当てつつ、能の「翁」を紹介しています。談山神社の野外ステージで演じられている「翁」が美しい。あたりは桜が満開です。「翁」は能のあまたある曲の中で私が一番好きな曲です。

 演者の顔ぶれがすごいです。翁は観世清和、三番叟は野村萬斎。翁後見二人のうち一人は大槻文蔵。小鼓の頭取は大倉源次郎。大鼓は亀井広忠。超一流の能楽師さんたちです。

 英語のナレーションは私にはさっぱりわかりませんが、大倉源次郎さんと野村萬斎さんが「翁」について語る場面が非常に興味深いです。日本文化が本来持っている複合的な部分や多面性について考えさせられます。

岩場歩き講習会

 十日ほど前の話です。所属している山の会で「岩場歩き講習会」が開かれたので参加しました。本来は、夏山例会(日本アルプスの山へ2泊3日で新米を連れて行ってくれる例会)参加希望者向けに行われている催しです。この夏はコロナの関係で夏山例会は中止になったのですが、岩場歩き講習会は予定どおり開かれました。

 阪急電車の芦屋川駅を出発して、高座の滝を通り、地獄谷へ。何とも恐ろしげな名前です。ここを歩くのは初めてでした。傾斜のきつい岩場をずんずん登り、雨続きで水量が増した沢(小さめの川)を何度も渡りました。小さな滝のすぐ前を渡る所もあって、靴ばかりか衣類もびっちゃんこ。でも、すぐに乾きました。

 利き足(私は右)をぐんと上げて岩の足がかりに乗せ、両手で岩をつかんで、ぐっと体を持ち上げる、という動作を何度も繰り返します。右足の位置が高いと、体が持ち上がりません。ひえー、どうしよう! という場面では、すぐ後ろを歩いていたリーダーさんが軽くお尻を支えて押し上げてくれました。ありがたい! 体が持ち上がらないのは、腹筋とお尻の筋肉が弱いからだそうです。もっと鍛えなくては。

 途中、ロープとハーネスの扱いを教わったり、切り立った岩場をトラバースする(水平に歩いて行く)練習をしたり。そしてたどり着いたのが岩梯子(いわはしご)です。垂直とまではいかないけれど、かなり急な角度でそびえる岩場を登るのです。ここが本日のハイライト。足がかり、手がかりは意外とわかりやすく、最後に岩と岩の間の狭い空間を潜り抜けるのも何とかクリアできました。やった!

 ここでお昼休憩です。ところが、午後は、この岩梯子を下るというのです。下りは登りより怖いです。「帰らせてもらいます」と言いたくなりましたが、そういうわけにもいかず、チャレンジ。登りではすんなり潜れた穴でしたが、今度はザックが引っかかって難儀しました。足場も見えないので、手探り足探り。やっと降り切ったときにはしんそこほっとしました。ここからまた岩場の続く道を歩き、高座谷を経て芦屋川へ。

 ゴールに到着したときのうれしかったこと! 充実感、達成感を味わいました。私のようなへっぽこでもちゃんとサポートして、最後まで怪我もなく歩かせてくださったリーダーさんやサポーターさんたちに感謝です。

 翌日は久しぶりのひどい筋肉痛。とくに痛かったのは太ももと腕の内側です。6月14日に山の会の例会がようやく再開されて、初めて参加した例会でしたから、余計にきつかったのです。でもこれで、また少し筋肉がついたかなと思うとうれしくて、またすぐにでも山に行きたくなりました。

 

2020年6月15日 (月)

花の宅配便

 花を定期的に配達してくれるサービスがあると友達から聞いて、ネットで調べてみたらいくつか見つかりました。月2回の配送で1800円という業者を選んで申し込みました。

 先日、第1回が届きました。

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 バラが11本、そしてカスミソウ。予想より豪華です。バラの深い赤がとてもきれい。

 玄関に飾りました。

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 もうちょっと上手にできるといいのですが…。

 

 

2020年5月31日 (日)

京都観世会館配信のユーチューブ

 京都観世会館が謡や仕舞を無料配信しています。「高砂」(結婚式で「高砂や〜」と謡われることのある、とてもポピュラーな曲です)を素謡で何人もの能楽師が一部分ずつ語ってリレーしていくというシリーズのほか、<きょうの能楽師>仕舞編というシリーズもあります。「きょうの」はおそらく「京の」とのかけことばなのでしょう。

 後者の1回目では京都観世会会長の片山九郎右衛門さんがご自宅の稽古場で小鍛冶 を舞っておられます。これが実にかっこいいのです。片山家の先代(九郎右衛門さんのお父さん)や、京舞井上流の家元、先代井上八千代さん(九郎右衛門さんのお母さん)のお写真が飾られているのがちらりと映り込んだりするのも興味しんしんです。地謡は録音のようです。

 また6歳の女の子が「猩々(しょうじょう)」を舞うこちらの動画 にも見入ってしまいました。猩々がお酒に酔って足がよろけるところなど、とりわけ可愛いです。地謡はお父さん(画像には入っていませんが)が務めておられるようです。

 仕舞というのは一曲の能のなかでクライマックスの部分を切り取って舞うものです。曲にもよりますが、「小鍛冶」や「猩々」は動きが多くてわかりやすいので、初心者の方にも楽しめるのではないかと思います。ぜひ一度、のぞいてみてください。

2020年5月22日 (金)

再放送ドラマ、おすすめの2本

 新型コロナの影響で、このところ、テレビドラマは再放送が目立ちます。その流れに乗ったのか、あの名作「腐女子、うっかりゲイに告る。」が再放送されることになりました。30日(土)深夜11時半から、NHKです。見逃した方はぜひこの機会にご覧ください。超のつくおすすめドラマです。

 「深夜食堂」も5月19日(火)から再放送が始まりました。私はこのドラマ、途中から見始めたので、この日の放送「赤いウインナーと卵焼き」は初めて見る内容でした。俳優さんたちがみんなうまく、味があって素晴らしい。高齢のゲイ、綾田俊樹。「近寄ったらぶっ殺す!」オーラを発散している黒めがねのヤクザ、松重豊。つまらない男に惚れてはその男の好物をマスターに作ってもらうストリッパーの安藤玉恵。そして全体を引き締めつつ、暖かい空気を醸し出しているのがマスターの小林薫。なんとも言えないかっこよさです。わずか30分の枠にさまざまな人間の人生がみっしり詰まっているという印象。欲を言えば、ヤクザの描き方が甘いのが気になります。

 「深夜食堂」はTBS系で毎週火曜日、深夜1時28分からの放送。私は録画して見ています。

2020年5月21日 (木)

能楽師のぱるおくん、動画で奮闘中

 19日に紹介した動画の話の続きです。

 その後、こんな動画 を見つけました。金春飛翔(ひかる)くん、愛称「ぱるお」が奮闘しているのですが、脱力感満載で、見ていて気持ちよく笑ってしまいます。若い能楽師にはこんなゆる〜い感じの人もいるんだ! と、感動すら覚えました(もちろん、舞台では別人のようにきりっとしているのでしょうが)。

 ぱるおくんの流儀は金春流。この流儀は今残っているお能の流儀の中でも最も歴史が古く、1400年続いており、ご宗家はなんと、81世です。ご宗家は東京に住んでおられ、ぱるおくんのお父さん、金春穂高さんが発祥の地である奈良で流儀を守っておられます。

 ちなみに、先日の記事で紹介した動画に出演している後のお二人は、金剛流の山田伊純(いすみ)さんと喜多流の高林昌司さんです。山田さんの舞は金剛能楽堂で拝見したことがあります。お稽古の基本のマナーを紹介するこちらの動画 もわかりやすくてユーモアたっぷり。楽しめます。

 

2020年5月19日 (火)

能楽師がUチューバーに?

こんな動画 を見つけました。

こちら

が第1回のよう。

 若手の能楽師3人(流儀はそれぞれ異なります)がZOOMを使ってトークイベントを開いています。名前は「ゆとりのかい」で、無料で視聴できます。一つ目は宣伝用に作られたもののようです。二つ目のが初めての作品(?)で、自己紹介をしています。3人とも、こんなことには慣れていないのが丸わかりで、とても不器用な感じがして、かえって好感が持てます。見ていて、笑ってしまいました。

 すでにいくつかアップしているらしい。これからもお能についてわかりやすく解説していくようです。楽しみが一つ、増えました。

 古典芸能関係、とくにお能の動画はチャンネル登録数が少なくて寂しいのです。少しでもご興味がありましたら、ぜひチャンネル登録をしてください。それが、今の苦しい状況でも伝統芸能を継承して行こうと踏ん張っている人たちを励ますことになりますから。

 

2020年5月15日 (金)

能のイベントがオンラインで見られる!

 古典芸能の舞台を見ることができなくなって、はや3カ月目。飢餓感は増すばかりです。昨夜、能関係のイベント予定を一覧で見ることのできるサイト「能楽(能・狂言)公演情報」で京都と大阪のイベントを調べました。多数のイベントがアップされているのですが、どれも「中止」「延期」ばかりでした。やっぱりなあ。

 そんな中で、オンラインで見ることのできるイベントを発見しました。京都の有斐斎弘道館で6月12日(金)の夜6時半から開催される「宗一郎能あそび」です。能の公演ではなくて、実演を交えた講座です。

 宗一郎とは、林宗一郎さんのこと。京都で長く続いている観世流シテ方のお家の若きご当主です(十四世だそうです)。この講座は数年前から催されており、私も通ったことがあります。その年ごとにテーマを設定した連続講座で、2カ月に1度の間隔で開かれます。

 私が通った年は能の作者にスポットを当て、観阿弥、世阿弥、元雅、金春禅竹、信光などを取り上げ、その生涯、作品の特徴をレクチャーしていただきました。とりわけ、謡の一部を実演してくださるところが魅力です。会場が10畳ほどの和室で、宗一郎師が間近に座っておられるので、迫力満点でした。

 ただ、有斐斎弘道館は我が家から行くには少し遠く、しかも開かれるのが夜の時間帯なので、その後は行きそびれていたのです。ところが、今年は前回の4月からオンラインで視聴できるようになったのだそうです。知らなかった! 参加費は2000円(オンラインでないときはお呈茶付きで3000円でした。)で、前もってホームページから申し込みをして支払いを済ませておきます。ホームページによると、今年のテーマは「江戸時代における能楽の位置づけについて、実演・特別ゲストを交えながら、さまざまな角度から探って行く」というものです。

 若い方は行動的ですね。早く6月になってほしい! 宗一郎さんのお声を聞いて、お姿を見たい! 生きる希望が湧いて来た、というと大げさ過ぎますが、一気に活力がみなぎって来た気分です。

 

2020年5月 7日 (木)

見応え十分なNHKの「テレワークドラマ」

 NHKが「今だから、新作ドラマ作ってみました」というキャッチコピーで、3夜にわたって「テレワークドラマ」を放送しています。打ち合わせ、リハーサル、本番収録とすべて、スタッフと俳優さんも、俳優さん同士も直接には会わずに制作したのだそうです。第1夜は「心はホノルル、彼にはピーナツバター」。5月4日(月)深夜11時40分から0時10分まで放送されました。

 出演は満島真之介と前田亜季の二人。遠距離恋愛を続けてきた二人はようやく結婚にこぎつけ、ホノルルで挙式する予定だったのですが、新型コロナの影響で中止することになってしまいました。パソコンの画面を通してやりとりするうちに二人はこれまで抑えていた本音を相手にぶつけ始めます。気持ちの行き違いがあらわになって、もう破局を迎えるのか? とハラハラしましたが、初めて本音を出せたことで結局、今まで以上に心が通い合い、ハッピーエンドで終わりました。

 第2夜は「さよならMyWay!!」。5月5日(火)の深夜11時15分から45分までの放送でした。出演は小日向文世と竹下景子です。妻が急死して四十九日を迎えた日、夫のパソコンに突然、妻が現れ、離婚届を突きつけます。保険の営業一筋に働いてきた夫が妻のことをちっとも理解していなかったというのです。夫が激昂してパソコンのスイッチを切ると、時間が元に戻り、再び妻がパソコンの画面に現れます。後半にドキッとするようなどんでん返し(古めかしい表現ですね)がありました。最後はほっこりした気持ちになれる終わり方でした。

 このドラマ、登場人物は二人だけ、セットはそれぞれの人物がいる部屋だけです。二人のやりとりはパソコンの画面を通じて行われます。設定は、新型コロナの影響で今までのようなドラマ作りができなくなったという意味で極めて「今ふう」ですが、中身は昔からあるセリフ劇です。セリフ劇は、よほど力のある俳優さんがそろわないと見ていられません。

 2作とも、30分という、ドラマとしては短めの時間で、場面も動きも限定されているという縛りの中で、片時も目の離せない密度の高いドラマに仕上がっていました。脚本もよくできていましたが、俳優さんたちの演技力に負うところが大きかったように思います。第1話の若い二人は見ていて気持ちの良い自然体の演技でしたし、第2話のベテラン俳優さんたちはさすがに奥行きの感じられる人物表現でした。この試み、とても面白いです。

 第3夜は明日5月8日(金)、夜11時40分から0時10分まで放送される予定で、出演するのは柴咲コウ、ムロツヨシ、高橋一生という顔ぶれ。これも期待できそうです。

 

2020年5月 6日 (水)

先代・市川猿之助(現・猿翁)のお弟子さんたち

 先日、Uチューブで配信された「スーパー歌舞伎セカンド オグリ」を見て、先代猿之助が育てたお弟子さんたちの歩みに改めて思いを馳せました。梨園出身者以外は(主役級の俳優としては)活躍できない歌舞伎界で(脇を固める俳優さんや「その他大勢」になることはできますし、そうした俳優さんが実力を備えていることは歌舞伎にとって非常に重要ですが)、猿之助は一般家庭出身の若手(多くは国立劇場俳優養成所の卒業生)を一人前の歌舞伎役者に育てるという大事業に取り組んできたのです。

 「オグリ」で三郎を演じていた市川笑也(えみや。以下、姓はすべて市川です)。現在61歳。 若い頃は美貌の女形でした。師匠の大抜擢でスーパー歌舞伎ではいつも猿之助の相手役を演じていました。「オグリ」「ヤマトタケル」など、美しくて存在感があり、演技力も及第点でした。

 ところがこの俳優さんは、古典歌舞伎の作品となるとアラが目立ちました。せっかく大きな役をもらっても、こなしきれないのです。身のこなしやセリフ回し、その人物の格の表現など、「何か違うなあ」という印象でした。やはり幼い頃から歌舞伎役者の家で育ち、歌舞伎の空気を呼吸し、日本舞踊などの習い事をきちんと習得してきた人たちとの差を埋めるのは難しいのかなあと思っていました。

 ところが、片岡愛之助は一般家庭の出身なのに、そうした違和感を感じさせないのです。同じ猿之助一門でも、「オグリ」で五郎を演じた猿弥(52歳)は、今でも古典歌舞伎の舞台で活躍しています。笑也は不器用なタイプなのかもしれません。もっとも、私は最近ほとんど歌舞伎を見ていないので、その後ぐんと成長しているかもしれません。

 大納言の妻と閻魔夫人を演じた笑三郎(50歳)は飛び抜けた美貌ではなく、女形にしては大柄過ぎて、役柄が限られがちな人でした。ところが「オグリ」ではその大柄なことが生かされて、顔も前より美しく見え、閻魔夫人のシーンでは隣にいる閻魔(浅野和之)を圧倒する存在感でした。古典歌舞伎もこなしているようです。松尾芸能賞、国立劇場優秀賞など数々の賞を受賞しているところをみると、よほどの努力家なのでしょう。

 ここからは「オグリ」に出演していなかったお弟子さんです。まず、市川右近(56歳)。大阪の日本舞踊の家元の長男なので、体の基礎、動きの基本は若い頃からできていました。猿之助の弟子の筆頭格として舞台でも大きな役をもらい、活躍していました。

 その後、市川海老蔵のもとで右團次という上方歌舞伎の由緒ある名前を襲名しました。子息が右近の名を継いで歌舞伎俳優になり、親子同時の襲名披露でした。いつだったか海老蔵が復活狂言を上演した際、海老蔵の敵役を演じていました。が、なにか存在感が希薄なように感じられました。主役と敵役の魅力が拮抗してこそ舞台は面白くなるのに、海老蔵とのバランスが取れていないのです。海老蔵のように並外れた華のある役者さんと並んで舞台に立つのは大変なのでしょう。池井戸潤原作のテレビドラマ「陸王」で善人役を演じていたのが記憶に残っています。

 二枚目で身長も高く姿の美しい段治郎(51歳)は、一時、「ヤマトタケル」の主役を演じるほど師匠に認められていましたが、猿之助が一線を退いてから劇団新派に移籍し、喜多村緑郎という、かつての新派の名優の名前を継ぎました。私は新派の舞台は見ていないのでよく知らないのですが、活躍しているのではないかと思います。最近、鈴木杏樹の不倫相手としてマスコミで名前が取りざたされていました。

 もう一人、美形の女形だった春猿(49歳)はちょっと軽い感じのキャラクターでテレビのバラエティ番組に出たりもしていましたが、段治郎と同じく新派に移りました。新派での芸名は河合雪之丞です。

 先代猿之助は浜木綿子と結婚して香川照之が生まれたのですがその後離婚し、息子とは生涯関わらないと決めていたらしく、自分には血を分けた後継者がいないこともあり、門閥中心の歌舞伎界に疑問を抱いて、一般家庭の子を一人前の歌舞伎役者に育てることをライフワークにしたのだろうと思います。

 ところが高齢になって病に倒れ、舞台には立てなくなってしまいました。香川照之は自分の息子(猿之助の孫)をどうしても歌舞伎役者にしたくて、父・猿之助と再会を果たし、自ら歌舞伎界に身を投じることで息子を歌舞伎役者に育てていく道に進みました。猿之助もこの展開を歓迎したようです。病気になってからは、猿之助は門閥外の弟子たちを育てることが事実上できなくなり、香川照之との再会でその方面への興味も失ってしまったのかもしれません。右近、段治郎、春猿の身の振り方は、猿之助の変化によって余儀なくされたものだろうと想像できます。

 私は先代猿之助の舞台を、スーパー歌舞伎だけでなく古典歌舞伎でも何度か見てきました。「ケレン」が得意なことばかり強調されがちで、確かに「義経千本桜」の「四の切」でのアクロバットのような動きや「伊達の十役」でのあっという間の早替わりの連続など、目をみはる見事さでした。けれど、その部分を除外しても、歌舞伎の伝統を受け継ぐ役者として密度の高い演技を見せ、歌舞伎の味わいをたっぷり伝えてくれる人で、私は大好きでした。

 今の猿之助も亀治郎時代にこの伯父のもとで修行していた時期があったのです。「オグリ」の猿之助に先代の面影が見えたように、古典歌舞伎の舞台でも先代の持っていた超一流の資質と技を消化して、これからますます開花させていくだろうと期待しています。

  

 

2020年5月 3日 (日)

義太夫の「リモート稽古」

 素人弟子として豊竹呂太夫師匠に教えていただいている義太夫も、今年で10年目。毎年、「絵本太功記十段目 尼ヶ崎の段」の一部分をお稽古して、夏の発表会ではお客様の前で語ってきました。

 ところが、私にとって10年目の節となる発表会を目指してお稽古に励むこの時期に、新型コロナが! 毎日カルチャーでの月に一度の義太夫教室は中止になり、国立文楽劇場の近くにあるお稽古場でのマンツーマンのお稽古もしていただけなくなってしまいました。

 そこで師匠が(実務はパソコン関係に堪能なお弟子さんが)始められたのが「リモート稽古」です。Zoomというソフトを使い、パソコンやスマホで師匠と弟子がお互いの顔を見ながらお稽古するのです。このとき、ほかの弟子も見学することができます。

 私は初めての経験なので、ほかの方のお稽古をおそるおそる見学させていただくところから始めました。「のぞき見」感覚で見ていたのですが、私が参加していることは画面の上でわかるのです。私がマイクとカメラを切った状態にしていても、登録した名前が表示されるからです。

 初めて顔を見せたので、お稽古が終わったとき師匠が声をかけてくださり、急いでマイクとカメラをonにしたところ、画面に映った自分の姿のひどさに我ながら唖然としてしまいました。普段、家にいるときのままのくたびれた服を着て、髪はバサバサ、お化粧もしていなくて、見るに耐えません。そのときの恥ずかしかったこと! それ以来、見学だけのときも少しましな服に着替え、お化粧もして臨むようにしています。

 先日、初めてお稽古を受けました。師匠と直接向き合っているわけではないのに、違和感や不便は少しも感じず、師匠のいつもと変わらない熱意が画面を通してまっすぐ伝わってきます。2度目のお稽古も受けて、今は3度目に向けて自分の稽古をしているところです。

 4月中旬には師匠のお誕生日を祝って、三十数人がネット上で集まりました。全員がそれぞれにお酒などの飲み物を入れたグラスを手にして、「おめでとうございます!」とお祝いします。一人の方がピアノで「ハッピーバースデー」の演奏をしてくださって、みんなで何度も歌いました。師匠は弟子の一人一人に声をかけてくださり、さまざまな会話が行き交い、とても楽しいひとときを過ごしました。美味しそうな料理を用意して食べながら参加している方もたくさんいました。師匠もお酒を飲みながらお寿司をつまんでおられました。

 この日、私は久しぶりに着物を着ました。ほかにも二人の女性が着物を着ていました。外出する回数が極端に減って、着物を着る機会も皆無です。ネットでのお祝いパーティーで着物を着て、華やかでおめでたい雰囲気を味わうことができるとは思ってもみませんでした。師匠のお元気な様子を拝見し、お弟子さんたちともネット上ではありますが久しぶりに会うことができて、思いがけないくらいの幸福感と充実感を味わいました。

 

2020年4月20日 (月)

歌舞伎と能をUチューブで楽しむ

 新型コロナの影響で古典芸能も公演はすべて中止になり、一時は寂しい思いをしていましたが、Uチューブで無料配信されるものが出てきて、楽しませてもらっています。

 昨日は歌舞伎の「スーパー歌舞伎セカンド オグリ」を見ました。主役は市川猿之助と中村隼人のダブルキャスト。隼人バージョンは名場面を編集したもの。猿之助のはフルバージョンで、3時間余りの舞台です。はじめ、隼人のを見ましたがやはり若いからか(27歳)、まだ主役には力量不足に思えて途中で止め、猿之助版を見ることにしました。

 スーパー歌舞伎は先代の猿之助の舞台を何度か見たことがあり、本来の歌舞伎とは別物のエンターテインメントだと認識していました。でも、この前「ナウシカ」を見て、今回この「オグリ」を見ると、その境界線は意外と緩やかなものに思えてきました。光線や音響をフルに使い、舞台装置も現代演劇のよう。衣装も古典歌舞伎とはまるで違います。それでも歌舞伎役者さんが演じていると、そこに歌舞伎の味わいが濃厚に感じられるのです。むしろ、古い話(原作は説経節)を今の時代に上演するために現代ならではのトピックや発想を取り入れるなどの工夫を凝らし、時代の変化にも関わらず変わることのない人間の心や生き方のようなものを描き出していて、思いがけないほどの感動を味わいました。

 この舞台はUチューブで無料配信することを前提にして無観客公演を 収録したもののようです。がらんとした客席から拍手もどよめきも起こらず、大向こうさんの「澤瀉屋!」という声かけもない中で、俳優さんたちの途切れない集中力、エネルギッシュな演技に敬意を覚えました。歌舞伎の持つ底力を見た気がしました。

 猿之助は少し太って、声や台詞回しが先代の猿之助(猿翁。今の猿之助の伯父)に似てきました。照手役の新悟は女形にしては決して美貌とは言えないのですが、しばらく見ないうちに見違えるほどうまくなっていて驚きました。隼人は猿之助バージョンでは遊行上人の役で、長身・イケメンが生かされ、立ち姿の美しい上人ぶりでした。

 この配信は残念ながら昨日で終了しました。ほかに第38回俳優祭で上演された「月光姫恋暫(かぐやひめ こいのしばらく)」が配信されています。私は以前、テレビで見たことがあります。俳優祭は歌舞伎役者さんたちがお客への感謝を込めて催されるもので、この演目もおそらく一度限りの上演だったと思います。超豪華な顔ぶれで笑いとサービス精神満載の舞台を見せてくれます。

 能では、大槻能楽堂が4月25日(土)14時から半能「三輪」を大槻文藏さん、半能「葵上」を大槻裕一さんが舞う様子が配信されます。これはTTR能プロジェクトとのコラボ公演です。ほかにも「能楽囃子体験」として小鼓などの打ち方を指導する様子が配信されています。

 Uチューブで「西宮能楽堂」を検索すると、梅若基徳さんの仕舞や以前の公演での解説を視聴することができます。歌舞伎は松竹という会社がやっているし文楽は国立なので少ないとはいえ休演中も給料が出ているようですが、能楽師さんはみな個人営業というかフリーランスというか、後ろ盾がないので、今の状況では生活が大変だろうと想像できます。何とか持ちこたえていただきたいと祈るような気持ちです。

 

 

2020年3月13日 (金)

再度公園に行きました

 新型コロナの関係で、山の会の3月例会がすべて中止になってしまって、がっかり。14日(土)は大槻能楽堂で文藏さんが「三輪」を舞われる予定で、楽しみにしていたのに、これも中止に。気分がふさぎがちでしたが、昨日、山の会の友人たちと5人で再度公園に行って、久しぶりに爽やかな楽しさを味わうことができました。

 コースは元町駅西口から諏訪山公園〜猩々池〜善助茶屋跡〜再度公園。ここでお昼休憩。午後は市ケ原から新神戸に下りました。去年の6月、私が山の会に入って初めて歩いたときと同じです。広葉樹の森の中をゆったり歩けて快適な道です。木々が芽吹きのきざしを見せ、ところどころ梅がまだ咲いていて芳香を放ち、ウグイスがこの時期にしては上手に鳴いていて、五感を楽しませてもらいました。空が真っ青に晴れ上がり、気温もちょうど良かった。再度公園はさすがに風が冷たくて少し寒かったですけども。今月初めての山歩きでした。

 今月はこのあとまだ6回も山歩きの計画ができました。私が案内するのはそのうち1回だけで(それも、山の道案内はベテランの友人頼みです)、ほかは全部、友達に連れて行ってもらうのです。山友(やまとも)はみんな付き合って楽しい人たちばかりで、いい友達に恵まれているなあと感謝感謝です。

 直近のプランは生駒山。初めて登るので、いっそう楽しみです。

2020年2月20日 (木)

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」が映画になっています

 新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」ディレイビューイングを見てきました。昨年12月に新橋演舞場で上演された「風の谷のナウシカ」を映画にしたものです。

 宮崎駿が書いた原作は長編で、ジブリのアニメでは一部を映画にしていました。歌舞伎化を企画した尾上菊之助は原作全体を取り上げました。そこに並外れた情熱を感じます。大作になったので、新橋演舞場では昼の部と夜の部に分けて通しで上演され、今回の映画も前編と後編に分けられています。

 今、上映されているのは前編です。上映時間が3時間近くもあり、疲れるだろうなと予想していました。実際、最初の方は作品の世界に集中できずちょっと退屈したりしたのですが、その後ぐいぐいと引き込まれ、間に15分の休憩を挟んで、最後まで圧倒されるような気持ちで見続けました。

 独特の台詞回し、見得、殺陣、花道を六法を踏んで下がる場面、本水を使っての立ち回り、宙乗りなど、歌舞伎の味わいがふんだんに生かされており、見ていてワクワクしました。アニメに出てくるオームやナウシカの乗り物などをそのイメージを損なうことなく大道具にしているところも素晴らしい。音楽もアニメの主題曲を上手に取り入れるなど現代曲を使う一方で、歌舞伎音楽(義太夫など)も生で入ります。その両方がうまく融合していました。これまでに新作歌舞伎はいくつも見てきましたが、この作品は一番完成度が高く、洗練されていると感じられました。

 俳優さんはナウシカを菊之助。この企画を実現したことそのものにも素晴らしい才能が感じられます。ナウシカ役を自然な雰囲気で演じていて好感度大です。準主役とも言えるクシャナは七之助。この人、いつの間にこんなに風格のある役者さんに育ったんだろうと目を見張りました。ユパという重要な役(ナウシカの師匠)に尾上松也。声が良く、貫禄十分です。この人の成長ぶりにも驚きました。

 ほかに悪の権化のような役を巳之助が演じていて、この人はこういう役がハマるなあと納得。爽やかな青年役を右近。重々しい僧正には又五郎。どの人も好演でした。

 歌舞伎を見たことのない人でも楽しめるおすすめ作です。今、大阪ステーションシティシネマ、MOVIXあまがさき、神戸国際松竹などで上演中。チケット代は4300円と、通常の映画より高いです。後編は28日から上映が始まるようです。ぜひとも見に行かなくては!

 

2020年2月 9日 (日)

金剛山で樹氷を見ました

 山の会で知り合ったTさんと二人で(というか、超ベテランのTさんに連れて行ってもらって)、昨日、金剛山に登って来ました。薄手で暖かい衣類を5枚着込み、耳まで覆う帽子をかぶり、ザックにアイゼンを入れて、雪山の装備です。

 JR環状線の新今宮駅から南海高野線に乗り換え(駅で「金剛山ハイキングきっぷ」という電車とバスの往復がセットになったお得なきっぷを購入)、河内長野駅で降りて南海バスに乗ります。35分で登山口へ。

 いきなり階段です。そして、階段が頂上までずっと続きました。階段を登るのが苦手な人には憂鬱かも。でも、段差の小さい階段なので、私はなんとか登りきりました。初めは広葉樹、途中からはよく手入れされた杉林の間を縫って歩きます。登るに連れて空気が澄んでいくのが心地よく感じられます。

 雪を期待していましたが、積もっていません。今日は「残念でした」で帰るのかなあと思っていましたが、途中、下山して来た女性が「霧氷が見られましたよ」と話しているのを聞いて、俄然、元気が湧いて来ました。

 山頂が近づくに連れ、あたりは霧に覆われて来ました。山頂付近はこんなようす。

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 こういうのを霧氷というのかな?  標高1053m。木々の枝ははっきり見えません。

 転法輪寺 というお寺(役行者が開いたのだそうです)と一言主を祀る葛木神社があり、暖かいおでんを売るお店もあって、家族づれやカップル、グループ、一人歩きのハイカーなどで山頂付近は大賑わいです。

 今までに50回以上来たことがあるというTさんが、周辺の道を案内してくれました。少し外れただけでほとんど人影がなくなり、静かです。そして素晴らしくきれいな樹氷をたくさん見ることができました。

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 野鳥も多く、羽の色の美しい鳥を少なくとも3種類見ることができました。しかもなぜだかすぐ近くまで来てくれるので感激でした。野鳥に出会うとなぜか「いいことがありそう!」と思ってしまいます。

 遠景で樹氷を見ると、まるで満開の桜のようです。こんもりして、淡いピンク色のように眼に映るのです。そのありさまは幻想的で優美です。

 お昼ご飯はしっかりした建物の中で食べました。テーブルと椅子がいくつも置かれている上に、ストーブまで燃えていて、暖かく食事することができます。雪山では寒い場所で立ったままそそくさと食事をすませるものだと聞いていたので、思いがけない幸運のように感じられました。

 下山はほぼ同じルートを通りました。帰りのバスは満員。この時期、とくに人気が高いのでしょう。ちなみにロープウェイは動いていませんでした。ロープウェイが運行中の時はもっと気軽に山頂まで行けるのです。もっとも、私たちはどのみちロープウェイを使わず登り下りしそうですが。

 活動時間は5時間6分、活動距離は9.5km。累積標高は上りが846m、下りが849mでした。

 

2020年2月 2日 (日)

1月のこと 初めてのB健例会

 ずいぶんブランクがあいてしまいました。

 年末は11人分のおせちを作り、1月には4日に初観能(大槻能楽堂)、5日に初山歩き。

 その後、そらまめさんたちと山歩き、文楽1月公演の2部(呂太夫師匠が熱演されていました)を見て、初釜。中旬に娘と孫二人に付き添って2泊でディズニーランドとディズニーシーに行き、

 下旬に学生時代の友人たちと森鷗外の読書会をして、

 25日に金春流の「翁」、山本東次郎さんの狂言「麻生」、友枝昭世さんの「羽衣」を拝見(大槻能楽堂)。

 26日には山の会に入会してから初めて「B健」クラスの例会に参加しました。「健」は健脚の意味で、「B」ランクの例会より難所が多かったり距離が長かったりするのです。私はまったく自信がなくて、ついていけるだろうか? と半信半疑だったのですが、歩ききることができました。

 コースは阪急電車芦屋川駅を出発して、会下山(えげのやま)遺跡→風吹岩→雨ヶ峠→東お多福山→奥池→大藪谷→小笠峠→樫ヶ峰→ゆずり葉台→宝塚西高校前バス停。バスに乗って阪急電車逆瀬川駅に着きました。15km、5時間の行程です。山道(急な登り下りが多数ありました)を15kmも歩いたのは初めてです。

 リーダーさんのすぐ後ろを歩かせてもらい、遅れてはいけないと必死でついて行ったら、途中でほかの参加者から「Cの例会(Bよりさらに健脚の人のランク。上級)でも行けますよ」と言われてびっくりしました。終了後の反省会でリーダーさんから「後ろにピタッとついてくるものだからあおられて、つい歩き方が速くなってしまった」と聞き、さらにびっくり仰天でした。

 この例会、友達から「お助けB健と言われていて、距離は長いけど、たいした難所はなくて歩きやすい」と聞いて申し込みしたのですが、私には十分きつかったです。それでも歩ききれたので、またひとつ自信がつきました。山歩きがますます楽しくなり、もう止まらない! 状態です。

 

2019年12月24日 (火)

能「蝉丸」(金剛能楽堂)

 21日(土)、TTR能プロジェクト京都公演「蝉丸」を金剛能楽堂で見ました。

 「TTR能プロジェクト」は小鼓幸流・成田達志さんと大鼓大蔵流・山本哲也さんがプロデュースする能の公演プロジェクトです。門閥や所属地域を超えた実力主義による配役が行われるのが魅力。私は今回、初めて拝見しました。

 「蝉丸」は滅多に上演されない曲です。シテ・逆髪(さかがみ)、ツレ・蝉丸の両方に抜きん出た技量を備える能楽師をそろえることがなかなか難しいからです。今回は逆髪に片山九郎右衛門、蝉丸に大槻文藏、地謡の頭に梅若実という最高の組み合わせで上演されることになり、「これはなんとしても見ておかねば」という気持ちになって、早くからチケットを取っておきました。

 公演は午後からなのですが、午前中11時から「『蝉丸』が120%面白くなるTTR講座」が開かれ、こちらにも参加しました。能楽師の味方玄(しずか)さんがこの曲についてレクチャーされました。

 蝉丸は百人一首の「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」で知られる人物。「今昔物語」に身分の低い琵琶の名手として登場します。次に登場するのは「平家物語」で、ここではなぜか皇族の一員とされています。

 能では蝉丸は天皇家の第四子なのですが、生まれながらに盲目。父・帝は蝉丸を逢坂山に捨てるように命じます。臣下は蝉丸に同情しつつ泣く泣く逢坂山まで輿(こし)で運び、髪を剃り出家させ、傘と杖を与えて去ります。近辺にいた博雅(はくが)の三位という人物(映画「陰陽師」で伊藤英明が演じていた安倍晴明の友人と同じ人物だそうです)が皇族であり琵琶の名手、蝉丸と知り、藁屋に住まわせて世話をします。

 一方、帝の第三子(つまり蝉丸の姉)、逆髪(女性)はなぜか髪が天に向かって伸び、それ故にか狂乱して都をさまよい、やがて逢坂山にやってきて蝉丸と再会します。逆髪と蝉丸はその身の上を互いに嘆き慰め合い、ひとときを過ごしますが、逆髪には一所にとどまらず放浪を続けることが運命づけられていて、弟に別れを告げ、去っていきます。

 逢坂という土地は都の文化圏の外れであり、東へ向かう人々や東からやってくる人々が行き交う交差点のような所でもあるので、芸能者や障害者はその旅人たちに芸を見せることで糊口を凌いだのだそうです。

 こうした大まかなお話の後、能舞台に上がって味方さんの指導のもと、構え(姿勢)を教えていただき、橋掛りを一人ずつ揚幕から舞台へ能独特のすり足で歩くという体験をさせていただきました。ただし、白足袋持参の人限定です。私はもちろん用意していきました。

 一人ずつ、味方さんが付き添うようにして構えを教え、一緒に歩いてくださるのですが、難しくて全然できませんでした。でも、めったにできない体験なのでとても興味深く、楽しめました。

 午後からの公演では文藏さんと九郎右衛門さんの謡が素晴らしかった! 今回はシテとツレが同格という特殊演出でした。 お二人とも、じっと座っているだけの場面も多いのですが、その座っている姿の存在感が強烈でした。二人の人物から、障害など人と変わったところがあると追い出してしまう社会、追い出される側の悲哀、どうにもできない絶望的なほどの孤独(博雅の三位という人物は救いです)が感じられました。600年も前にこんな作品が書かれていたことに驚いた。と、はじめは思っていましたが、600年前の人々の方がこうした人間社会の本質的な問題に敏感だったのかもしれません。

 書くのが最後になってしまいましたが成田達志、山本哲也お二人のお囃子もとてもよかったです。拝見したところでは中堅から少し上くらいのお年頃ではないかと思います。これからもTTRプロジェクトに注目していくつもりです。

 

2019年12月15日 (日)

能「浮舟」「紅葉狩」(京都観世会館)

 山歩きのことを書き終えていませんが、今日観た能「浮舟」「紅葉狩」について、記憶が新しいうちに記しておきます。会場は京都観世会館です。

 プログラムは能「清経」、狂言「腰祈」と続いて、20分の休憩。能「浮舟」、休憩15分。仕舞3曲、能「紅葉狩」でした。私は昨日わりとハードな山歩きをした上に、夜の睡眠時間が短めだったからか、「清経」と「腰祈」はそのあとの休憩も含めて爆睡してしまいました。

 「浮舟」(「彩色」という小書きが付いていました)でやっと目が覚めました。前シテ・里女、後シテ・浮舟を演じるのは橋本こう(手偏に「広」の古い書体)三郎さんです。前にこの方の仕舞を拝見して魅了され、一度お能を観たいとずっと思っていました。

 前シテは小袖の上に墨色の透ける生地の装束を着ています。肩幅が広く、しかも珍しいほどのいかり肩で、ごつい感じがして、失礼ながら女性のようには見えませんでした。

 ところが後シテで白い小袖に変わり、髪も前の方に一部を細く長く垂らし(初めはお下げ髪かと思いました)、残りを後ろで束ねた形で登場すると、たおやかで可憐で、肩もなで肩に見えるし、一体何をどうすればあんなに変われるのか不思議なほどでした。前もって調べる時間がなかったので詞章はよくわからずじまいでしたが、観ているだけで同性でも魅了されるような上品で美しく可愛らしい浮舟でした。

 仕舞3曲の中では味方玄さんが「経正」のキリを舞われたのが勇壮でかっこよかったです。

 「紅葉狩」。「鬼揃」の小書きが付いているのでシテのほかにツレが5人、登場します。前場では上臈の華麗な装束。舞台に6人も並ぶと目がさめるような美しさです。後場では本性を表して鬼女の姿になるので、迫力満点です。シテは林宗一郎さん。6人の中でもひときわ華麗な装束で、前場では袴に大柄の紅葉が散っていました。

 戸隠山で美女たちが木陰に幕を巡らせて紅葉をめでつつ酒宴を開いています。家来を連れて鹿狩りに来ていた維茂(これもち)はこの様子を見かけ、邪魔しないようにそっと避けて通ろうとするのですが、美女たちのリーダー格の女性が袖にすがって引き止めるのです。

 それが絶世の美女だったので、維茂はつい気を許してしまい、美女たちの舞を眺めながら、勧められるままに酒を飲んで眠ってしまいます。家来たちは維茂の弓矢を預かり、姿を消していて、維茂は一人きりです。

 男山八幡がこの様子を見て武内の神を使いに立て、神刀を維茂に与えます。夢に武内の神からの警告を聞いた維茂は目を覚まし、鬼女たちと闘い、勝利をおさめます。斬り組みの場面は短く、あっさりと終わってしまいます。そりゃあ、神様が与えた刀ですから、鬼女をやっつけるのにもたもたしたりはしないのでしょう。

 目の保養になる楽しい曲でした。人気が高いようで、2回席まで満席で、補助席まで出ていました。

 歌舞伎や文楽にも取り入れられている演目です。歌舞伎で見たときは、シテ役は玉三郎。歌舞伎ならでは、玉三郎ならではの贅を尽くした衣装、舞台全体も紅葉尽くしで華麗でした。文楽では紅葉の中に、なぜか中央に青々した松の木が1本。あれは一体何だろうと不思議に思っていましたが、きっと能から採った演目であることを表しているのか、能への敬意を表現しているのでしょう。

 昨日はややハードなコースで5時間くらい山を歩き回り、今日は打って変わって5時間ほどを京都観世会館でじっと座って過ごしました。じっと座っている方が、断然疲れました。

 

2019年12月 9日 (月)

紅葉の箕面山、ランチが美味しかった!

 21日は山の会で知り合ったKさんの案内で箕面へ。8人のチームです。箕面に行ったのは何年ぶりでしょうか。凶暴で怖かったサルは見かけませんでした。

 Kさんが用意してくださったコースガイドをなくしてしまって、どんなコースで歩いたのかをちゃんと書けないのが残念です。ユコリンさんのブログによると、こういうコースhttps://blog.goo.ne.jp/3kabozu/e/196c4aff1b5d7629a1b7cffd64a4b46a
だったようです。

箕面の山の急坂を登り下りして紅葉を眺め、

 

 箕面の滝に着きました。

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 平日でしたがこの周辺はやはり観光客が多い。外国から来た人たちも大勢いました。

 この日の1番の楽しみは「山帰来」という名前のレストラン(宿泊施設もあるようです)でのランチ。到着したら広い駐車場がほぼ満車状態なので驚きました。知る人ぞ知る人気スポットのようです。申し込みを済ませてから(予約は受け付けてもらえません)、眺望の素晴らしいロビーでおしゃべりしながら待って、まず4人が入り、30分近く待って、後の4人も入りました。人気のランチプレートは前の4人の3人目でおしまいに。私たちはハンバーグのランチなどを選びました。

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 私はオムライスのハーフサイズに。食べかけの写真で失礼! 私にはちょうど良いボリュームでした。 

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 ふわふわの卵がたっぷり乗っていて、すごく美味しかったです!

 帰り道、道沿いのお店で干し柿にする柿を買い求めるメンバーもいました。自分で干し柿を作るなんて、すごい! びっくりしました。

 8人で楽しく山道を歩き(急登もありました)、紅葉を楽しみ、美味しいランチまでいただけて、幸せいっぱいの山歩きでした。

 

2019年12月 7日 (土)

11月の山歩き

   趣味の山歩き、10月はBテストの例会に2回参加したほか、地図読みの座学と実習にも参加しました。11月は山歩きのベストシーズン。山の会の例会に4回行ったほかに、山の会で知り合ったユコリンさんたちと2回、そらまめさん、Hさんと1回行ったので、合計7回も山に行き、後半は紅葉を満喫しました。

 1日はユコリンさんの案内で比良山系の蓬莱山へ。女性ばかり4人のチームです。

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 権現山、ホッケ山を経て蓬莱山へ。

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 途中でイワカガミの花を見つけました。普通は5月頃に咲くのだそう。やたらと暖かいからでしょうか。季語では優美に「返り花」と言います。

 蓬莱山の山頂は標高1174m。私史上最高の高さです。登りがきつくてしんどかったけど、眺望は最高でした。琵琶湖と大津の町を見下ろし、

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 (実際はもっときれいで素晴らしかったのですが、写真では再現できません。)

 周囲の山々も360度のパノラマ状態。比良山系がお気に入りの山の一つになりました。

 11月14日、ユコリンさんの案内で菊水山、鍋蓋山に登り、再度公園へ。この日は3人。菊水山にやっと登ったと思ったら下って、鍋蓋山に登るというコース。急登が続いてきつかった〜。登りきった自分を誉めてあげたい気分でした。再度公園への途中で歩いた鍋蓋山北尾根は道の両側に眺望が開け、木々の姿も美しく、何度も訪れたくなるようなコースでした。

 この日、再度公園の紅葉が見事でした。池の対岸。

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 公園の中はあちらもこちらも紅葉しています。

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 再度公園以外はまだどこも青楓。大龍寺のイチョウも青々していました。

 続きはまた書きます。

2019年12月 5日 (木)

12月の句会

 月1回の俳句講座、12月は句会です。兼題は「大根」「みかん」、そのほか自由で、冬の季語です。

 出席した受講生は7人。1人3句まで投稿できます。私が投稿したのは次の3句でした。

    1 更ける夜の姉とみかんとマンガ本

    2 娘らの腓(こむら。ふくらはぎのこと)のごとく大根(だいこ)並ぶ

    3 ゆづくんの切れ長の目や冬銀河

 先に受講生が佳作2句と特選1句を発表し、感想を述べます。1と2の句はそれぞれ1人が佳作に選んでくれましたが、3は音沙汰なしでした。

 次に先生が佳作5句を発表、講評もされました。5句の中に1の句も入っていました! 「季語のみかんを強調する語順を工夫してください。このままだとマンガ本のほうに重点が置かれています」とのこと。なあるほど。

 続いて先生の特選3句の発表と講評です。1句目はSさんの句

    大根をおろしつテレビのデモ激し

 この句を選んでいたのは私だけでした(佳作でしたけれども)。少しは鑑賞眼ができてきたのかなあとほくほく。先生は「大根おろすテレビにデモ激し」と添削されました。

 2番目の特選は、なんと、私の3の句でした! 先生、「いい句です。どうして誰も選ばなかったの」。そんな風に言っていただけて、飛び上がるほどうれしかった! この時点では作者の名前は伏せられているので、「どなたの作ですか」と聞かれて名乗るときのうれしかったこと! 講評では、例えば自選句集を作ることになって、この句が数十年後、100年後にも読まれることを考えると、「ゆづくん」という固有名詞は敢えて避けて、例えば「アスリート」「スケーター」というような言葉に置き換えたほうが良い、とのお話でした。

 この句、実はまったく自信がなかったのです。3句のうちに入れるか入れないか、最後まで迷ったほど。先生には採ってもらえないだろうなあと思っていました。今回も予想が大外れで大喜びです。

 残る特選の1句はこれもSさんの句。

    柿落葉ひろう子の大きランドセル

 先生は

    柿落葉をひろう子大きなランドセル

と添削されました。

 2の句は「大根足」と若い女性の足が揶揄されるのとは逆に、大根の美しさ、若い女性の足の溌剌とした美を詠んだつもりでしたが評価されませんでした。

 今回でこの講座の受講を辞めることにしました。授業が終わってから、先生にそのことをお伝えしてお礼を申し上げましたら、「これからもゆっくりでいいですから、続けてください。『才能あり』ですから」と言っていただきました。またまた飛び上がるほどうれしかったです。最上級のはなむけの言葉!

 新年からどうするか、まだ決めていません。私は趣味が多過ぎてお金を使い過ぎなので、なるべくお金のかからない方法で続けようと、そればかり考えていましたが、先生のはなむけの言葉を聞いて、少し欲が出てきました。やっぱり質の良い刺激を受け、向上できる場に身を置きたい。少々お金がかかっても…?

 急がなくてかまわないので、じっくり考えるつもりです。

    

 

2019年10月25日 (金)

山の会の「Bテスト」に合格しました

 6月初めに入会した山の会では、すべての会員を実力や健康状態、年齢に応じてランク分けしています。例会(山歩き)もすべてランク別に行われ、自分のランクより上(難しい)のコースには参加できません。

 入会すると、誰もがAランクになります。初級者といったところでしょう。この段階でS(Aよりも足の弱い人向け)の例会と、Aの例会と、A健の例会に参加することができます。「健」は健脚の意味です。

 私は初めはAの例会でゆっくりのんびり山歩きを楽しんでいて、当分はこのままAランクにいようと思っていました。でも、Bランク(中級かな)になるには70歳未満という年齢制限があるのです。それなら体調と気候の良いうちに挑戦してみようという気持ちになって来ました。その目標ができてからはなるべくA健コースを選んで歩きました。

 10月になってからBテストを2度、受けました。「Bテスト」として設定された例会に参加して、装備、体力、技術などを見てもらうのです(テスト申込者以外のB会員も参加します)。2度以上テストを受けて、その結果でBランクに行けるかどうかが決まります。

 1回目は新神戸駅〜布引滝〜市ケ原〜稲妻坂〜天狗道〜摩耶山と登り、山寺尾根〜長嶺堰堤〜護国神社〜阪急六甲と下るコース。約11kmを4時間で歩きました。山寺尾根から摩耶山へ登ったことはこれまでに2度ありましたが、下ったのは初めてでした。

 2度目は阪急岡本駅〜八幡谷〜打越峠〜出合〜西お多福山と登り、一軒茶屋〜魚屋道〜瑞宝寺公園〜有馬バスセンターと下りました。こちらは12.5km、5時間。登りが長くて、足がヘトヘトに疲れてしまいました。そのせいもあり、もともと下りに弱いこともあって、下りでは前を歩く人に少し遅れがちでした。

 今週の水曜日に判定の会議が行われたはずなので、今日あたり、結果を知らせるハガキが来るかもと、期待と不安の入り混じった気持ちで待っていたところ、来ました! 合格の通知です。やった! うれしい!!!

  6月初めに入会した頃は、Bランクに行くなんて、私の実力ではとんでもないことのように思っていました。その後、10月まで、8月以外はほぼ週に1回のペースで例会に参加して山道を歩き、入会以前よりずいぶん足の筋肉が鍛えられたようです。苦手だった下りも、前よりは安定して歩けるようになりました。

 Bテストの例会で歩くコースは難易度でいうと、BとB健の中間くらいなんだそうです。それを2回、歩ききったのだから、これからはBのコースに行ってもたぶん歩ききれるのでしょう。B健コースは遠慮しておきますが。Bの例会は同じ1日にもいくつも設定されているので、どれに行こうか選ぶのが楽しい悩みになりそうです。

 山の会で出会う会員さんたちの中には80代でもとてもお元気で、それぞれの実力に応じた山歩きを楽しんでいる方が数えきれないほど、たくさんおられます。私も無理のない範囲で、怪我しないことに注意を払って、山歩きを長く楽しく続けていきたいです。

 

2019年9月24日 (火)

能「三井寺」(京都観世会館)

 京都観世会9月例会に行きました。能3曲(「錦木」「三井寺」「天鼓」)、狂言1曲、仕舞4曲が上演されました。この日の私の一番のお目当ては「三井寺」。これが期待以上の素晴らしさでした。主な出演者は次のとおりです。

   シテ 片山九郎右衛門

   ワキ 宝生欣哉

   大鼓 河村 大

   小鼓 飯田清一

   笛  杉 市和

   アイ 茂山忠三郎

 我が子が行方不明になった母(シテ)が清水寺に参詣し、子との再会を祈る。すると夢の中で清水観音から子に会いたければ三井寺へ行けというお告げを受け、母は三井寺へと急ぐ。(当日のチラシより。続きは省略)

 このあと、中秋の名月の三井寺で奇跡が起こります。

 この曲は私が京都まで習いに行っている謡の講座で今年、取り上げられています。もっとも、このところ忙しくて、ちっとも出席できていないのですが。

 習っていたのは、母親が清水寺を後にして三井寺に向かうときの場面です。詞章は次のとおり。

 かやうに心あり顔なれども。我は物に狂ふよなう。いや我ながら理(ことわり)なり。あの鳥類や畜類だにも。親子の哀は知るぞかし。ましてや人の親として。いとほし悲しと育てつる。子の行方をも白糸の。乱心や狂ふらん。

 この部分の抑揚や強弱に母親の気持ちをどう表現するか、林宗一郎師は教えてくださったのですが、私のような初心者にはまったくできませんでした。この日、片山九郎右衛門さんが橋掛りでこの部分を謡うのを聞いた時、そこに表現されている心情の深さと繊細さにゾクゾクしてしまいました。

 九郎右衛門さんの声は素晴らしい。単に美声というのではなく、複雑に濃淡・深さが絡み合い、しかも正確に制御されているという印象です。舞も美しくて目が吸い寄せられます。物狂いと言っても終始、気品に満ちた狂女でした(そもそも能に登場する「狂女」は、今の私たちが考えるような「狂人」ではないらしいです)。

 囃子方の3人、アイの狂言方も見事で、「なんだかすごいものを見てしまった」という印象です。ただ一つ残念だったのはワキツレ二人のうちの一人が若過ぎるからか、まだ体も声もできておらず、浮いていたことでした。お名前からして、宝生流の後継者ではないかと想像しました。

 若い後継者を超一流の能楽師さんたちの舞台に出演させるというやり方は、よくあることのようです。何より勉強になるのでしょう。でも、観客としては正直言って迷惑です。ほかに効果的な教育方法はないのでしょうか。

 もっとも、ワキツレの一人の出来が悪いくらいでこの舞台が台無しになるようなことはなくて、陶然としているうちに終演を迎えました。

 

 

2019年9月21日 (土)

この間のできごと(メモ)

 忙しくて、記事の更新を怠っているうちに、あっという間に2カ月近くもたってしまいました。この間、書こうと思いながら書かずじまいだった事柄をメモっておきます。

8月上旬

・神戸にある夫の実家の墓地へ車でお墓参りに行った帰り道、渋滞を避けて六甲山を通ったら、ヒグラシが大合唱。クマゼミやアブラゼミの声はよく耳にしますが、ヒグラシは久しぶりです。まだ暑かったけど、季節の移ろいが感じられました。

白鷹禄水苑(西宮市)の催しで奈良の天河弁財天へバスツアー。拝殿に向かい合った能舞台で味方玄さんの謡と久田舜一郎さんの小鼓に聴き惚れました。味方さんは以前から私の大好きな能楽師さんですが、この日は久田さんの小鼓の音色に衝撃を受けました。最初の一打で辺りの空気が一変するのを感じて、鳥肌が立つような思いをしました。至近距離でお二人の演奏を何曲も(「翁」の神歌、「唐船」のキリ、「弱法師」の一部、「養老」の一部など)聴くことができ、贅沢極まりないひとときを過ごしました。

・夏風邪を引き、五日ほど体調不良に。暑くてもとても元気に過ごしていたのに、なぜ風邪を引いたのか、謎です。

・身内にうれしくてめでたい出来事があり、このあと、忙しさが加速しました。

8月中旬

・文楽劇場で呂太夫師匠の素浄瑠璃「熊谷陣屋」を聴きました。登場人物の心情がくっきりと浮かび上がり、今までで一番感動した「熊谷」でした。弥陀六という人物の魅力が初めてわかったのも収穫。

8月下旬

・山の会の例会に参加してハイキング。8月はこの1回だけでした。猛暑のさなかでしたが、曇りがちだったからか、山歩き中の気温は25℃。爽やかな風が吹き渡って快適に歩けました。

8月末

・素人義太夫の年1回の発表会(本当はもう1回、あるのですが、私はそちらには出ていないので)。今年も難しかった。でも、舞台に上がり、始まってしまえば、あとは楽しめました。入門以来、1年に一部分ずつ語ってきた「絵本太功記十段目」、来年はついに段切り(最後の部分)です。

9月上旬

・山の会主催の講習会でコンパスと地図の使い方を実地にトレーニング。新しく入った会員対象の催しです。新会員一人に研修部の方がほぼ一人つくという手厚さ。おかげでよく理解できました。でも、実際にしょっちゅうコンパスを使った地図読みをやっていないとすぐに忘れてしまいそう。

・秋の句会。「秋雨や更地となりし父母の家」という句で講師の先生の特選をいただきました。

・大津伝統芸能会館で能「鵺(ぬえ)」を拝見。シテは林宗一郎さん。3分の1くらい眠ってしまい、鵺の悲しみを感じ取るには至らず。

・神戸の湊川神社神能殿で能「三輪」を拝見。シテは観世清和さん(観世流ご宗家)。 ほとんど起きていられました。後シテが舞う神楽が五感に心地良く、自分の体のDNAに刻み込まれた何かが喜んでいるように感じられました。

9月中旬

・そらまめさんにリーダーになってもらい、芦屋川からごろごろ岳へハイキング。平日だからかあまり人気のないコースなのか、蜘蛛の巣がわんさか張っていて、先頭を歩く人がストックでそれを払いながら進んでくれました。感謝です。20日ほどブランクがあいた後の山歩きで、とても楽しかった!

・京都観世会館で能「橋弁慶」「龍田」を拝見。眠くならずにしっかり起きていられました。「橋弁慶」は舞、謡、お囃子のリズムが調和していて聴き惚れました。「龍田」は詞章の描くイメージが素晴らしく美しい。紅葉の盛りの季節ではなく、晩秋、龍田川に散り敷いた紅葉を薄氷が閉ざしている情景を取り上げるところ、なんという感覚の鋭さ、センスの良さでしょう。和歌を下敷きにしているのです。作者は金春禅竹といわれています。

・山の会の例会で北摂の大峰山へ。予想最高気温が33℃という日で、山を歩いていても今までで一番暑かった。登りがかなり険しく、下りもわりと急な道が続きましたが、歩ききれたので自信がつきました。山歩きの後、三田にあるキリンビールの工場を見学。そして試飲。よく冷えたビールの美味しかったこと!

というような日々でした。

 

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